ビタミンDと白髪。報告があるのは「関連」まで
白髪の対策を、栄養素の名前で調べる人は少なくありません。中でもビタミンDは、白髪と組み合わせて検索される成分のひとつです。
理由はあります。若い年代で白髪が目立つ人を調べた研究に、ビタミンDの値が低い傾向を報告したものがあるからです。 ただ、その一文だけを取り出すと「ビタミンDで白髪が減る」という話になってしまいます。関連の報告と、摂れば変わるという主張は、別のものです。
報告されているのは、あくまで関連まで。そこから先に何が言えて、何が言えないのかを、白髪改善ソムリエ®が整理します。
この記事の前提
ここで扱うのは、ビタミンDと白髪に関する現時点の報告の整理です。白髪を減らしたり、元の色に戻したりする方法ではありません。栄養素の不足が疑われる場合の判断は、医療機関で行うものです。
そもそもビタミンDは、体の中で何をしているのか
ビタミンDの主な役割は、カルシウムやリンの吸収を助けること。骨の健康に関わる栄養素として知られています。免疫の働きにも関係していると報告されています。
特徴は、食べ物からだけでなく、日光を浴びることで皮膚でつくられること。魚(さけ、さんま、いわしなど)やきのこ類、卵黄にも含まれますが、日照時間や日焼け止めの使い方、季節によって体内の量は変わります。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人の目安量が1日あたり9.0μg、耐容上限量が100μgとされています。上限が設定されていることは、あとで効いてきます。
なぜ、白髪と結びつけて語られるのか
理由は大きく2つあります。
ひとつめ。観察研究での関連です。 若い年代で白髪が目立つ人(若年性白髪)を対象にしたインドの小規模な研究に、ビタミンDの値が低い傾向を報告したものがあります。ただし、同じような集団を対象にした別の研究でははっきりした関連が確認されておらず、結果は一貫していません。ビタミンB12や銅の血中濃度、鉄の貯蔵状態の指標であるフェリチン値などとの関連を報告した観察研究もありますが、こちらも項目ごとに結果は分かれます。
ふたつめ。毛包(もうほう)にビタミンDの受け皿があることです。 髪をつくる毛包には、ビタミンDを受け取るための受容体(VDR)があります。この受容体がうまく働かない遺伝的な病気では、髪が抜けることが知られています。
ここを根拠に「ビタミンDは髪に関わる」と書かれることが多い。ただし、この受容体をめぐって報告されているのは、髪が抜けるかどうかの話です。 この受容体の資料からは、白髪との関係までは確認できません。髪の量の話は白髪と薄毛で別に扱いました。
「関連がある」と「足せば変わる」の間にある距離
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
ここで紹介した研究から分かるのは、白髪とビタミンDの低い値が一緒に見られたという事実まで。不足が白髪に先行したかは分かりません。白髪が目立つ人にビタミンDが少ない傾向があったとしても、次の3つの可能性が残ります。
- 不足が白髪に関わっている
- 別の共通する要因(生活のパターン、日照、体調)が両方に影響している
- たまたま一緒に観察された
そして、もうひとつ。「不足している人に足す」と「足りている人がさらに足す」は、まったく別の話です。 欠乏している状態を是正することと、白髪に対する働きかけとして摂ることは、目的が違います。
米国の公的な健康情報MedlinePlusでは、加齢による白髪について、サプリメントやビタミン類で進行を止めたり減らしたりはできないと説明されています。この点は白髪サプリは効くのか、白髪と食べ物・栄養の関係でも同じ結論に行き着いています。
不足しているかどうかは、推測ではなく検査で分かる
ビタミンDの状態は、血液検査で確認できます。 主に25-hydroxyvitamin D(25(OH)D)という値をみます。
推測する必要がありません。ただし、誰にでも必要な検査というわけではなく、受けるかどうかは医療機関で相談して決めるものです。日光に当たる時間が少ない生活、日焼け止めを一年中使う習慣、魚をあまり食べない食事。心当たりがあるなら、自己判断で飲み始めるより先に相談してみてください。
そして、検査で不足が分かった場合の対応は、白髪のためではなく体のためのものです。 目的が入れ替わらないように気をつけてください。
足すときに、知っておきたいこと
ビタミンDは脂に溶けるタイプのビタミンで、体に蓄積します。 余った分がすぐ排出されると考えて、多く摂ることは避けてください。
摂りすぎると、血液中のカルシウムが増えすぎて、吐き気、食欲の低下、のどの渇き、頻尿などが起こることがあります。腎臓に負担がかかることも報告されています。耐容上限量が設定されているのは、このためです。
製品によっては、1粒で1日の目安量を大きく超えるものもあります。複数の製品を併用していると、知らないうちに上限を超えることもある。上限は、食品・飲料・サプリメントを合わせた量で考えるものです。持病や服用中の薬がある方は、自己判断で増やす前に医療機関で確認してください。
通常の食品だけで過剰になることは、一般的ではありません。日光についても、長時間浴びれば体内のビタミンDが増え続けるわけではなく、そちらは紫外線による皮膚への影響のほうが問題になります。
白髪改善ソムリエ®としての見解
ビタミンDと白髪について、白髪改善ソムリエ®としての整理は3点です。
第一に、報告されているのは関連までだということ。若い年代で白髪が目立つ人に低い傾向がある、という観察の話です。摂れば白髪が変わるという意味ではありません。
第二に、状態を血液検査で確認できること。足りているかどうかを、推測で決める必要はありません。検査が必要かどうかも含めて、医療機関で相談してから決められます。
第三に、上限があるものとして扱うこと。ビタミンDは蓄積します。「多いほどいい」という発想が通用しない栄養素です。白髪改善ソムリエ®が大切にしているのは、髪と頭皮の状態を守りながら、確かめられることから順に手をつける考え方です。
専門家に相談するという選択肢
次の場合は、サプリメントを選ぶより先に医療機関へ。
- 若い年代で白髪が目立ち、背景を確認したい
- 短い期間で、はっきり白髪が増えたと感じる
- 抜け毛の増加、強い疲れ、寒がり、体重の変化など、髪以外の変化も重なっている
- 骨や筋肉の痛み、たびたび起こる骨折など、ビタミンDの不足が疑われる症状がある
- すでにサプリメントを複数併用していて、量が分からなくなっている
栄養状態や全身の症状は内科、白髪や頭皮・毛髪の状態は皮膚科が相談先になります。症状や持病によって適した科は変わります。急に増えたと感じる場合の確認すべきことは急に白髪が増えた気がするときにまとめました。
栄養の話に手をつける前に、そもそも自分の白髪がどういう出方をしているのか。それを見てもらうところからでも構いません。白髪改善ソムリエ®は、白髪との向き合い方やケアの考え方を学ぶ民間資格です。国家資格ではなく、診療や医療的な判断を行うものではありません。
白髪との向き合い方の全体像は、白髪改善ソムリエ®メソッドの詳細ページでも整理しています。あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ビタミンDを摂ると、白髪は減りますか?
A. 減るとは言えません。若い年代で白髪が目立つ人にビタミンDの値が低い傾向を報告した研究はありますが、結果は一貫しておらず、摂ることで白髪が変化すると示した資料は現時点で確認できません。米国の公的な健康情報でも、加齢による白髪はサプリメントで進行を止めたり減らしたりできないと説明されています。
Q. 日光に当たれば、白髪にいいのでしょうか。
A. 日光を浴びると皮膚でビタミンDがつくられますが、それが白髪に働くという根拠は確認できません。紫外線には皮膚や髪への影響もあるため、白髪を目的に日光浴を増やすことは勧められません。
Q. 自分がビタミンD不足かどうかは、どうすれば分かりますか?
A. 血液検査(主に25(OH)D)で確認できます。ただし全員に必要な検査ではないため、受けるかどうかは医療機関で相談してください。心当たりがあるなら、推測して飲み始めるより先に相談するほうが確実です。
Q. サプリメントは、多めに飲んでも大丈夫ですか?
A. ビタミンDは体に蓄積するタイプのビタミンで、耐容上限量が設定されています。摂りすぎると血液中のカルシウムが増えすぎ、吐き気や腎臓への負担が起こることがあります。複数の製品を併用している場合は特に、医療機関で確認してください。
Q. ビタミンD以外に、白髪と関連が報告されている栄養素はありますか?
A. ビタミンB12や銅の血中濃度、鉄の貯蔵状態の指標であるフェリチン値などとの関連を報告した観察研究があります。いずれも若年性白髪の文脈での報告で、項目ごとに結果も一貫しておらず、原因と確定したわけではありません。詳しくは白髪サプリは効くのかで扱いました。
まとめ
- 若い年代で白髪が目立つ人に、ビタミンDの値が低い傾向を報告した小規模な研究がある。報告されているのは関連まで、しかも結果は一貫していない
- 毛包にはビタミンDの受容体があるが、そこで報告されているのは髪が抜けるかどうかの話。白髪との関係は確認できない
- ここで紹介した研究では、不足が白髪に先行したかは分からない。別の共通要因が両方に影響している可能性も残る
- 「不足を是正する」と「白髪のために足す」は目的が違う
- 米国の公的な健康情報では、加齢による白髪はサプリメントで進行を止めたり減らしたりできないとされている
- ビタミンDは血液検査(25(OH)D)で状態を確認できる。ただし全員に必要な検査ではなく、要否は医療機関で相談する
- 脂に溶けるタイプで体に蓄積する。耐容上限量は食品・飲料・サプリメントを合わせた量で考える
- 複数のサプリメントを併用している場合は、自己判断で増やす前に医療機関へ
成分名で検索すると、答えが見つかりそうな気がします。実際に見つかるのは、たいてい「関連の報告」まで。そこで止まっておけるかどうかが、この手の情報との付き合い方を決めます。
監修:白髪改善ソムリエ®
※本記事は一般的な情報の整理であり、特定の効果・効能を保証するものではありません。栄養素の必要量や不足の判断には個人差があります。持病や服用中の薬がある方、サプリメントの利用を検討している方は、医療機関にご相談ください。
参考にした主な情報源
- MedlinePlus(米国国立医学図書館 NLM)「Aging changes in hair and nails」(加齢による白髪化は主に遺伝で決まること/サプリメント・ビタミン等では加齢による白髪化の進行は止まらない・減らないとの記載)
- MedlinePlus「Ferritin Blood Test」(フェリチンは鉄を蓄えるたんぱく質で、血清フェリチン値は鉄の貯蔵状態の指標であること)
- NIH Office of Dietary Supplements「Vitamin D — Health Professional Fact Sheet」(ビタミンDの働き=カルシウム・リンの吸収と骨の健康/日光により皮膚で合成されること/過剰摂取による高カルシウム血症・吐き気・腎障害などのリスク)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(成人のビタミンD目安量9.0μg/日、耐容上限量100μg/日)
- Int J Trichology「Premature Graying of Hair: Review with Updates」(若年性白髪と栄養状態=ビタミンB12・鉄・銅・ビタミンD等との関連を報告した観察研究の紹介。いずれも因果の確定ではない)
- MedlinePlus Genetics「Vitamin D-dependent rickets」(ビタミンD受容体(VDR)の機能不全を伴う型で脱毛がみられることの記載)
- MedlinePlus「Vitamin D Test」(ビタミンDの充足状況は主に血清25-hydroxyvitamin D[25(OH)D]で評価すること/全員へのルーチン検査は推奨されないこと)
- Int J Trichology「Factors Associated with Premature Hair Graying in a Young Indian Population」(若年性白髪とビタミンDの関連がはっきり確認されなかった研究。結果が一貫しないことの根拠)
- Harvard Health Publishing「Why does hair turn gray?」(白髪の時期と程度は主に遺伝の影響を受けること)