白髪と薄毛。別々の変化が、同じ時期に重なる
鏡の前で、白髪を探していたはずが、地肌を見ている。分け目のあたりが、前より広く見える気がする。
このふたつは、多くの場合セットで語られます。「白髪が増えると薄くなる」「白髪の人はハゲない」。正反対の説が、どちらも同じ顔で流通しています。
先に結論を置きます。白髪と薄毛は、主に変化している働きが違う、別々の変化です。 そのうえで、同じ時期に重なりやすい理由と、片方の情報でもう片方を判断しないための線引きを、白髪改善ソムリエ®が整理します。
この記事の前提
ここで扱うのは、白髪と髪のボリュームの関係についての整理です。白髪を減らす方法でも、髪を生やす方法でもありません。髪のボリュームの変化には医療で扱う領域が含まれるため、判断は医療機関に委ねる前提で書いています。
止まっているのが「色」か「量」か
髪をつくる場所は、頭皮の下にある毛包(もうほう)という器官です。ここには役割の違う細胞が同居しています。
白髪は、色の側で起きる変化です。 髪に色をつける色素細胞(メラノサイト)の働きが落ちたり、その供給元である色素幹細胞が減ったりすることで、色のつかない髪が生えてきます。髪そのものをつくる働きまで止まるわけではないので、白髪になったこと自体で本数が減ることはありません。 仕組みそのものは白髪が生えるメカニズムで扱いました。
薄毛は、量の側で起きる変化です。 女性や男性に多いパターン型の脱毛症では、髪をつくる毛包が少しずつ小さくなり、生えてくる髪が細く短くなっていきます。伸びる期間(成長期)そのものが短くなることもあります。抜け方の背景はほかにもあり、円形脱毛症のように別の仕組みで起こるものも含まれます。白髪があっても脱毛症は起こります。ただし円形脱毛症では、色のある毛が抜けて白髪が残る場合もあります。
主に変化している働きが違う。だから、片方の状態だけで、もう片方の進み方は判断できません。
「白髪が多い人は薄毛になりにくい」は、確かめられていない
よく聞く説です。逆向きの「白髪が増えたら次は薄毛のサイン」も、同じくらい見かけます。
どちらの見方も、個人の将来予測に使えるだけの根拠は確認できません。 「そういう事実はない」と断言するのではなく、今のところ、そう言える裏づけが見当たらない状態です。この仕分けの考え方は白髪が多い人の特徴でも同じ枠組みで扱いました。
説として広まりやすい理由は、想像がつきます。白髪も髪のボリュームも、気になり始める時期は人によって違いますが、重なる方は少なくありません。同じ時期に並んで現れるものは、因果でつながっているように見えます。
ただ、同じ時期に起きることと、一方がもう一方を引き起こすことは、別の話です。 ここを混ぜたまま「自分はどちらのタイプか」を判定しようとすると、答えの出ない問いに時間を使うことになります。
重なる理由は、たいてい「時期」
では、なぜ重なるのか。
重なる理由のうち、いちばん分かりやすいのは年齢です。色素をつくる働きが落ちるのも、毛包が小さくなっていくのも、加齢とともに起きる変化。同じ時計で動いている、別々の現象という面があります。
そのうえで、両方に関わりうる要因もあります。ヒトの白髪の毛包で色素細胞以外の変化を報告した研究や、白髪と男性の脱毛に共通して関わる遺伝的な要因を報告した研究もあります。ただし、白髪から薄毛へ直接つながることを示したものではありません。栄養状態(鉄や一部のビタミン)、甲状腺の働き、喫煙も挙げられますが、白髪側の研究は若白髪を対象にしたものが中心で、個人の原因を確定するものではありません。白髪と食べ物・栄養の関係、白髪サプリは効くのかで、それぞれ根拠の強さまで戻して整理しています。
そして、髪のボリュームの変化には、医療で確認したい背景があります。 女性の場合、鉄が不足している状態や甲状腺の病気、出産後のホルモンの変化などで、髪が抜けやすくなることが知られています。これらは医療で確認できる範囲のこと。自分で原因を決める前に、調べたほうが早い領域です。
「薄くなった気がする」の中身を、分けて考える
量そのものの変化と、見え方の変化は、分けて考える必要があります。
白髪が増えると、髪全体の色のばらつきが大きくなります。分け目のところは地肌が見える場所。色の見え方が変わることで、地肌が以前より目立つと感じる方もいます。白髪の分布と見え方については白髪が一か所に集まる理由、側頭部の白髪で扱いました。
もうひとつ、髪の太さそのものが加齢で変わることも知られています。髪が細くなると、同じ本数でも「ボリュームが落ちた」と感じることがあります。
分け目の位置を変えると、地肌の見え方は変わります。負担の側でいえば、強く引っぱるまとめ髪を長く続けた場合に、牽引性脱毛症という形で実際に髪が減ることが知られています。引っぱる力のかかる髪型を続けているなら、そこは別に考えてください。
量が減ったのか、見え方が変わったのか。どちらなのかで、相談する先が変わります。
染めることと、ボリュームの関係
「白髪染めを続けると薄くなるのでは」。この疑問も整理しておきます。
通常の使い方をしている範囲で、白髪染めが薄毛の直接の原因になると一律には言えません。ただし、かぶれや炎症が起きた場合は別の話です。米国皮膚科学会(AAD)は、カラーやパーマ、縮毛矯正などによる髪と毛包へのダメージが、時間の経過とともに抜け毛につながりうると案内しています。薬剤そのものの話と、トラブルやダメージが起きたときの話は、分けて考える必要があります。
染める間隔や塗り方の設計は白髪染めの頻度で、質感の変化は白髪はなぜパサつくのかで整理しました。
染める前に、安全の話をひとつ
日本ヘアカラー工業会は、ヘアカラーを使う前に、毎回、48時間前からパッチテスト(皮膚に少量つけて反応をみる試験)を行うよう案内しています。これまで何度も問題なく染めてきた方でも、体質の変化などにより、ある日突然かぶれるようになることがあるためです。毎回の実施が案内されているのは、酸化染毛剤(いわゆるヘアカラー・白髪染め)などの永久染毛剤と、ヘナ・ヘナ由来物を含む製品です。ヘアマニキュアなどの半永久染毛料は区分が異なりますが、製品によってはパッチテストが案内されるため、表示を確認してください。
テストの途中で、塗った部分に発疹、発赤、かゆみ、水疱、刺激などの異常を感じたときは、48時間を待たずにすぐ洗い落とし、染毛は行わないでください。酸化染毛剤のパッチテストや使用で一度でも異常が出た方は、以後、別の製品を含めて酸化染毛剤を使わず、そのパッチテストも行わないこと。
パッチテストで異常が出なかったからといって、本番で反応しないと決まるわけでもありません。米国FDAも、毎回の皮膚テストを勧めたうえで、陰性でも使用時に反応が起きうると案内しています。
かぶれを起こしやすい成分として、パラフェニレンジアミン(PPD)が知られています。過去にヘアカラー(酸化染毛剤)でかぶれたことがある方は、以後、酸化染毛剤を使わないでください。日本ヘアカラー工業会もそう案内しています。黒色のヘナタトゥー(ブラックヘナ)を経験したことがある方も、PPDを含む製品で反応が出るリスクが高いとNHSは案内しています。心当たりがあれば、使う前に皮膚科に相談し、サロンにも伝えてください。
白髪改善ソムリエ®としての見解
白髪と薄毛について、白髪改善ソムリエ®としての整理は3点です。
第一に、別々の変化として扱うこと。片方の情報でもう片方を判断しない。「白髪が多いから薄毛の心配はない」も、「白髪が増えたから次は薄毛だ」も、どちらも根拠のある読み方ではありません。
第二に、髪のボリュームの相談は、美容室より先に医療機関という順番があること。白髪の出方は生活の中で付き合っていける変化ですが、髪が抜ける・減る側には、検査で分かる背景が混ざります。順番を逆にすると、時間だけが過ぎます。
第三に、見え方の条件は、今日動かせること。分け目の位置、染める間隔、乾かし方。量そのものを変えられなくても、鏡に映るものは変わります。白髪改善ソムリエ®が大切にしているのは、髪と頭皮の状態を守りながら、見え方の条件から整えていく考え方です。
専門家に相談するという選択肢
次の場合は、髪色の相談より先に医療機関へ。
- 短い期間で、明らかに抜け毛が増えた
- 分け目や頭頂部の地肌が、以前よりはっきり見えるようになった
- 円形に髪が抜けている部分がある
- 頭皮に湿疹、かさぶた、強いかゆみ、痛みがある
- 強い疲れ、寒がり、体重の変化など、髪以外の変化も重なっている
- ヘアカラーの使用中や使用後に、かゆみ、赤み、腫れ、水ぶくれなどが出た
相談先は皮膚科です。ただし、息がしづらい、唇や喉が腫れる、飲み込みにくい、強いめまいがあるといった全身の症状が出たときは別。まれではありますが重いアレルギー反応の可能性があるため、すぐに119番へ。自分で運転して受診しないでください。
そこまでではないけれど、白髪と地肌の見え方が同時に気になっている。そんなときは、髪を直接見てもらうところからで構いません。どこが、どう見えているか。それが分かって初めて、色の話とボリュームの話を切り分けられます。白髪改善ソムリエ®は、白髪との向き合い方やケアの考え方を学ぶ民間資格です。国家資格ではなく、診療や医療的な判断を行うものではありません。
白髪との向き合い方の全体像は、白髪改善ソムリエ®メソッドの詳細ページでも整理しています。あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 白髪と薄毛には、関係がありますか?
A. 白髪から薄毛へ直接つながることを示した資料は確認できません。白髪は主に髪に色をつける働きの変化、薄毛は主に髪をつくる働きの変化です。どちらも加齢とともに起き、両方に関わる要因の報告もあるため、同じ時期に重なることは珍しくありません。
Q. 白髪が多い人は、薄毛になりにくいのでしょうか。
A. そう言える裏づけは確認できません。逆に「白髪が増えたら薄毛のサイン」という説も同様です。どちらか一方の状態から、もう一方を予測することはできないと考えてください。
Q. 白髪染めを続けると、薄毛になりますか?
A. 通常の使い方をしている範囲で、直接の原因になると一律には言えません。ただし、かぶれや炎症が起きている場合、カラーやパーマなどのダメージが積み重なっている場合は別です。米国皮膚科学会(AAD)は、そうしたダメージが時間とともに抜け毛につながりうるとしています。染める前のパッチテストを省かず、異常が出たときは使用を中止して皮膚科にご相談ください。
Q. 白髪と抜け毛、どちらを先に相談すればいいですか?
A. 抜け毛のほうが先です。短期間で抜け毛が増えた、地肌が目立つようになった場合は、検査で分かる背景があることがあります。色の相談は、そのあとでも遅くありません。
Q. 白髪を抜くと、その部分が薄くなりますか?
A. 抜いたことが原因で周りの白髪が増えるわけではありませんが、繰り返し抜けば毛根の周りに負担がかかり、薄毛につながることがあると米国皮膚科学会(AAD)は説明しています。詳しくは白髪は抜いてはいけないのかで扱いました。
まとめ
- 白髪は主に「色」の変化、薄毛は主に「量」の変化。変化している働きが違う
- 「白髪が多い人は薄毛になりにくい」「白髪の次は薄毛」は、どちらも個人の将来予測に使えるだけの根拠がない
- 重なる理由のひとつは、どちらも加齢とともに起きること。両方に関わる要因の報告もあるが、白髪から薄毛への直接の因果は示されていない
- 栄養状態・甲状腺・喫煙と白髪の関係には、若白髪を対象とした関連の報告がある。一方、鉄不足や甲状腺の病気は脱毛の原因になることがある
- 女性の抜け毛には、鉄の不足や甲状腺の病気、出産後の変化など医療で確認できる背景がある
- 「薄くなった気がする」の一部は、白髪が増えたことによる色の見え方の変化から来ていることがある
- 分け目の位置を変えると地肌の見え方が変わる。強く引っぱる髪型を続けると牽引性脱毛症につながりうる
- 白髪染めの通常の使用が薄毛の直接の原因になると一律には言えない。ただしかぶれや炎症、ダメージの蓄積は別問題
白髪と地肌、どちらも同じ鏡に映ります。だからこそ、ひとつの原因でまとめて説明したくなる。ただ、中で起きていることは別々です。分けて見たほうが、打つ手もはっきりします。
監修:白髪改善ソムリエ®
※本記事は一般的な情報の整理であり、特定の効果・効能を保証するものではありません。髪の状態には個人差があります。抜け毛が急に増えた場合、地肌が目立つようになった場合、頭皮や皮膚に変化がある場合は、皮膚科などの医療機関にご相談ください。
参考にした主な情報源
- MedlinePlus(米国国立医学図書館 NLM)「Aging changes in hair and nails」(加齢に伴う白髪化と髪の変化。白髪化は主に遺伝で決まること/サプリメント・ビタミン等では白髪化の進行は止まらない・減らないとの記載)
- Harvard Health Publishing「Why does hair turn gray?」(髪の色は毛がつくられる時点で決まる/白髪の時期と程度は主に遺伝の影響)
- American Academy of Dermatology(AAD)「Hair loss: Who gets and causes」(脱毛の背景となる要因/ヘアカラー・パーマ・縮毛矯正などによる髪と毛包へのダメージが時間とともに抜け毛につながりうること)
- MedlinePlus Genetics「Androgenetic alopecia」/American Academy of Dermatology(AAD)「Female pattern hair loss」(パターン型の脱毛症で毛包が小さくなり、髪が細く短くなる変化と成長期の短縮)
- American Academy of Dermatology(AAD)「Hairstyles that pull can lead to hair loss」(強く引っぱる髪型と牽引性脱毛症の関係)
- NHS「Hair loss」(鉄不足などの脱毛原因/受診の目安)
- NHS「Underactive thyroid (hypothyroidism)」(甲状腺機能低下症に伴う脱毛)
- American Academy of Dermatology(AAD)「Hair loss in new moms」(出産後のホルモン変化に伴う抜け毛)
- 英国皮膚科学会(BAD)「Alopecia areata」(円形脱毛症では色のある毛が抜け、白髪が残る場合があること)
- Int J Trichology「Premature Graying of Hair: Review with Updates」(若白髪と喫煙・ビタミンB12・鉄・銅・甲状腺機能の関係、および葉酸などの検査に関する記述。いずれも因果の確定ではない)
- ヒト毛包の単一細胞解析(2022)/白髪の遺伝的予測を調べた原著論文(2020)(白髪の毛包での色素細胞以外の変化、白髪と男性の脱毛に共通して関わる遺伝的変異の報告)
- 日本ヘアカラー工業会(JHCIA)「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を実施しましょう」「ヘアカラーリング製品の分類」(毎回48時間前からの実施の案内/対象は永久染毛剤とヘナ・ヘナ由来物を含む製品/半永久染毛料でも製品により案内があること/異常を感じたら48時間を待たずに洗い落とし、以降の使用も控えること)
- 米国FDA「Hair Dyes」(使用のたびに皮膚テストを行うことの推奨/テストで反応がなくても、その後の使用時に反応が起こりうること)
- NHS「Hair dye reactions」(パラフェニレンジアミン(PPD)がかぶれの主な原因成分であること/ブラックヘナのタトゥー経験がある場合は反応のリスクが高まること/まれに起こる重いアレルギー反応=呼吸困難・唇や喉の腫れ・嚥下困難などは緊急の対応が必要)
- 日本ヘアカラー工業会(JHCIA)「アレルギー反応を経験された方へ」(酸化染毛剤でかぶれたことがある方は、以後酸化染毛剤を使用しないこと)
- 日本救急医療財団 心肺蘇生法委員会「救急蘇生法の指針2020(市民用)」(厚生労働省が周知。アナフィラキシーが疑われる症状では直ちに119番通報)
- American Academy of Dermatology(AAD)「What causes gray hair, and can I stop it?」(抜毛は薄毛(hair thinning)につながりうること)