白髪が多い人の特徴を、根拠の強さで3つに分ける
「白髪が多い人には、こういう特徴がある」。そう書かれたリストは、検索すればいくらでも出てきます。生活習慣、食べ物、性格、体質。項目は各記事でばらばらで、しかも並列に並んでいます。
問題は、どれが確かめられていて、どれがそうでないか。同じリストの中に、遺伝のようにはっきりした裏づけがあるものと、根拠が見当たらないものが、同じ顔で混ざっています。
この記事では、よく挙がる「特徴」を根拠の強さで3つに仕分けます。そのうえで、探しても仕方のないことと、確かめられることを分けて、白髪改善ソムリエ®が整理します。
この記事の前提
ここで扱うのは、白髪の出方に関わる要因の整理です。白髪そのものを減らしたり、元の色に戻したりする方法ではありません。出方には大きな個人差があり、特定の要因から個人の状態を判定できるものではありません。
その前に。「多い」を測る物差しは、存在しない
仕分けに入る前に、片づけておきたいことがあります。
「人より白髪が多い」を判定する、共通の基準がありません。 白髪の割合を測る標準的な方法もなければ、年代別に「平均何割」を示した信頼できるデータも、ほとんど見当たらない状態です。
数少ない手がかりのひとつが、2012年に発表された世界規模の調査です。British Journal of Dermatology に掲載されたこの調査では、50歳時点で白髪が50%以上ある人は6〜23%と報告されました。「50歳で髪の半分が白髪になる」という通説が、実態と合っていないことを示した研究として知られています。
注目したいのは、6〜23%という幅の広さです。地域や集団によって、これだけばらつく。つまり「普通」の範囲がきわめて広いということです。年齢ごとの目安そのものは白髪は何歳から生えるのかで整理しました。
物差しがない以上、「自分は多い側なのか」という問いには、答えが出ません。出ない問いを立て続けるより、変えられることに軸を移すほうが早い。 それが、この記事の立場です。
①裏づけがはっきりしているもの——遺伝と年齢
3つのうち、最初の層。ここは短くて済みます。
遺伝。 白髪がいつ、どの程度出るかは、主に受け継いだ遺伝子の影響を受けるとされています。これは一般向けの公的な健康情報でも一貫して書かれている内容です。2016年には、ラテンアメリカの集団を対象にした大規模なゲノム研究で、白髪化と関連する遺伝子領域(IRF4)が報告されました。白髪化に関連する遺伝子座位(ゲノム上の位置)としては、これが初めての報告にあたります。
年齢。 もうひとつは、単純に年齢です。色素をつくる働きは加齢とともに落ちていきます。誰にでも起きる変化で、避ける方法は知られていません。
この2つが、「白髪が多い人の特徴」として最も確かな部分。そして、どちらも本人には選べません。 遺伝の話は白髪は遺伝するのか、仕組みそのものは白髪が生えるメカニズムで詳しく扱っています。
リストの上位2つが選べないもので占められている。この事実は、押さえておく価値があります。
②関連の報告はあるが、因果とまでは言えないもの
2番目の層。ここが、いちばん誤解されやすいところです。
若い年代で白髪が目立つ人(若年性白髪)を対象にした総説では、次の要因との関連が繰り返し取り上げられています。なお「若い年代」の線引きは集団によって違い、総説では白人系で20歳未満、アフリカ系米国人で30歳未満といった目安が使われます。
- 喫煙:若年での白髪と喫煙の関連を報告した観察研究が複数あります
- 栄養状態:ビタミンB12、鉄、銅、葉酸などの不足と白髪の関連を報告した研究があります
- 甲状腺の機能:甲状腺の働きに関わる状態との関連が指摘されています
- 特定の薬剤:一部の薬剤(抗マラリア薬など)で白髪が誘発された報告があります。多くは中止や減量で元に戻るとされます
- ストレス:色素をつくる幹細胞が減る仕組みが、動物実験で示されています。ヒトの毛でも、ストレスが減った時期に色が戻った例が報告されていますが、研究者自身が「ごく一部の毛に限られるまれな現象」としており、白髪を減らす方法として確立したものではありません
ここで2つの区別が要ります。
ひとつめ。「関連がある」と「原因である」は違います。観察研究で両者が一緒に見られたとしても、どちらが先かまでは決まりません。
ふたつめ。これがより重要です。「不足が関わっている」と「足せば戻る」は、まったく別の話です。 栄養素の不足と白髪の関連が報告されていることは、サプリメントを飲めば白髪が減るという意味にはなりません。一般向けの公的な情報では、サプリメントや栄養補助食品で白髪化の進行が止まる・減るとはされていない。ここは白髪サプリは効くのかと白髪と食べ物・栄養の関係で整理しています。
ストレスとの距離感は白髪とストレスの関係へ。若い年代で気になる場合は20代の白髪もあわせて。
この層の正しい使い道は、ひとつだけ。若い年代で目立つ、または短い期間ではっきり増えた場合に、医療機関で背景を確認する手がかりにすることです。自分で原因を決め打ちして、自分を責める材料にする使い方ではありません。
③裏づけが見当たらないもの
3番目の層。よく見かけるのに、根拠として示せるものが確認できない項目です。
- 「白髪が多い人は薄毛になりにくい」
- 「白髪が多い人は長生きする/しない」
- 特定の食べ物を食べているかどうかで決まる(黒ごま、わかめ、海藻など)
- シャンプーの選び方で白髪の量が決まる
- 頭皮のマッサージが足りないから増える
- 白髪を抜くと増える
いずれも、信頼できる形で示した資料は確認できません。 「そういう事実はない」と断言するのではなく、「今のところ、そう言える裏づけがない」という状態。
最後の「抜くと増える」だけは、はっきり否定できます。1本抜いたせいで周りの毛が白くなったり増えたりすることはありません。ただし抜いた毛は白いまま生え変わり、白髪が減るわけでもない。繰り返し抜けば毛根の周りに負担がかかり、薄毛につながることがあると米国皮膚科学会(AAD)は説明しています。抜かないほうがいい理由は、増えるからではありません(白髪は抜いてはいけないのか)。
食べ物の話は白髪と食べ物・栄養の関係、シャンプーは白髪が気になる人のシャンプー選びで、それぞれ根拠のある範囲まで戻して整理しました。
「特徴」を探すより、確かめられること
3つに仕分けたあとに残るものを、順番に置きます。
若い年代で目立つ、または短期間で増えたなら、医療で背景を確認する。 ②の層は、自己判断の材料ではなく受診の手がかりです。血液検査で分かる範囲のことは、推測するより調べたほうが早い(急に白髪が増えた気がするとき)。
短期間の変化には、もうひとつ知っておきたい説明があります。色素をつくる働きが急に落ちたのではなく、色のついた毛のほうが抜けて、白い毛だけが残ったというケースです。円形脱毛症では色のついた毛が抜けやすく、もともと白かった毛が残るため、一夜にして白髪が増えたように見えることがあります。増えたのか、目立つようになったのか。どちらなのかで、確認する場所が変わります。
見え方の条件を動かす。 「多い」という体感の一部は、分布ではなく見え方から来ています。分け目の位置、地肌が開く場所、光の当たり方。白髪が一か所に集まる理由、側頭部の白髪、白髪の左右差で、それぞれ扱っています。
染め方を設計し直す。 白髪の量が同じでも、間隔と塗り方で見え方も髪の負担も変わります(白髪染めの頻度)。
人と比べる場所を減らす。 ①で見たとおり、量を決めている主な要因は選べません。他人と比べて落ち込むことに、材料としての意味がない。同じ話はなぜ白髪がない40代がいるのかでも扱っています。
染める前に、安全の話をひとつ
白髪が多いほど、染める機会は増えます。だから先に置いておきます。
日本ヘアカラー工業会は、ヘアカラーを使う前に、毎回、48時間前からパッチテスト(皮膚に少量つけて反応をみる試験)を行うよう案内しています。これまで何度も問題なく染めてきた方でも、体質の変化などにより、ある日突然かぶれるようになることがあるためです。毎回の実施が案内されているのは、酸化染毛剤(いわゆるヘアカラー・白髪染め)などの永久染毛剤と、ヘナ・ヘナ由来物を含む製品です。ヘアマニキュアなどの半永久染毛料は区分が異なりますが、製品によってはパッチテストが案内されるため、表示を確認してください。
テストの途中で、塗った部分に発疹、発赤、かゆみ、水疱、刺激などの異常を感じたときは、48時間を待たずにすぐ洗い落とし、染毛は行わないでください。酸化染毛剤のパッチテストや使用で一度でも異常が出た方は、以後、別の製品を含めて酸化染毛剤を使わず、そのパッチテストも行わないこと。
もうひとつ。パッチテストで異常が出なかったからといって、本番で反応しないと決まるわけではありません。米国FDAも、毎回の皮膚テストを勧めたうえで、陰性でも使用時に反応が起きうると案内しています。
かぶれを起こしやすい成分として、パラフェニレンジアミン(PPD)が知られています。過去にヘアカラー(酸化染毛剤)でかぶれたことがある方は、以後、酸化染毛剤を使わないでください。日本ヘアカラー工業会もそう案内しています。黒色のヘナタトゥー(ブラックヘナ)を経験したことがある方も、PPDを含む製品で反応が出るリスクが高いとNHSは案内しています。心当たりがあれば、成分表示を確認したうえで、施術前に伝えてください。染める回数が多い方ほど、この前提は効いてきます。
白髪改善ソムリエ®としての見解
「白髪が多い人の特徴」について、白髪改善ソムリエ®としての整理は3点です。
第一に、リストの上位は、選べないもので占められていること。遺伝と年齢。ここが主役である以上、生活習慣の項目を並べて自分を採点しても、答えは出ません。
第二に、関連の報告を、対処法として読み替えないこと。栄養素の不足と白髪の関連が報告されていることと、その栄養素を足せば白髪が減ることは、別の話です。ここを混ぜた情報が、いちばん多く出回っています。
第三に、「多いかどうか」より「どう見えているか」に軸を移すこと。物差しのない問いを立て続けるより、今日変えられる条件のほうに手が届きます。白髪改善ソムリエ®が大切にしているのは、髪と頭皮の状態を守りながら、見え方の条件から整えていく考え方です。
専門家に相談するという選択肢
次の場合は、ケアより先に医療機関へ。
- 若い年代で白髪が目立ち、背景を確認したい
- 短い期間で、はっきり増えたと感じる
- 白い毛が生えている部分の皮膚も、白く色が抜けている
- 頭皮に湿疹、かさぶた、強いかゆみ、痛みがある
- ヘアカラーの使用中や使用後に、かゆみ、赤み、腫れ、水ぶくれなどが出た
相談先は皮膚科です。ただし、息がしづらい、唇や喉が腫れる、飲み込みにくい、強いめまいがあるといった全身の症状が出たときは別。まれではありますが重いアレルギー反応の可能性があるため、すぐに119番へ。自分で運転して受診しないでください。
そこまでではないけれど、自分の白髪の量をどう受け止めればいいのか分からない。そんなときは、髪を直接見てもらうのが近道です。どこに、どれくらい、どんな出方をしているか。量そのものより、その分布と見え方が分かって初めて、打ち手が決まります。白髪改善ソムリエ®は、白髪との向き合い方やケアの考え方を学ぶ民間資格です。国家資格ではなく、診療や医療的な判断を行うものではありません。
白髪との向き合い方の全体像は、白髪改善ソムリエ®メソッドの詳細ページでも整理しています。あわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 白髪が多い人に、共通する特徴はありますか?
A. はっきりした裏づけがあるのは、遺伝と年齢の2つです。喫煙、栄養状態、甲状腺の働き、ストレスについては関連の報告がありますが、原因と確定したわけではありません。生活習慣や食べ物で量が決まるという説の多くは、根拠となる資料が確認できない状態です。
Q. 自分は人より白髪が多いのでしょうか?
A. 判定する共通の基準がありません。50歳時点で白髪が50%以上ある人は6〜23%という調査があり、この幅の広さ自体が個人差の大きさを示しています。「普通」の範囲がきわめて広いため、多い・少ないの線を引くこと自体に無理があります。
Q. 生活習慣を変えれば、白髪は減りますか?
A. 減るとは言えません。一般向けの公的な情報では、サプリメントや栄養補助食品で白髪化の進行が止まる・減るとはされていません。若い年代で目立つ場合は、自分で原因を決めるより、医療機関で背景を確認するほうが確実です。
Q. 白髪が多い人は、薄毛になりにくいと聞きました。
A. 信頼できる形で示した資料は確認できません。白髪と髪のボリュームは、それぞれ別の背景を持つ変化です。両方が気になる場合は、片方の情報でもう片方を判断しないほうが無難です。
Q. 親が白髪が多いと、自分もそうなりますか?
A. 白髪の出る時期と程度は主に遺伝の影響を受けるとされているため、傾向が似ることはあります。ただし、遺伝は1つの遺伝子で決まるものではなく、同じ親から生まれても出方は分かれます。決まっているわけではありません。
まとめ
- 「人より白髪が多い」を判定する共通の物差しは存在しない
- 50歳時点で白髪が50%以上ある人は6〜23%。この幅の広さが個人差の大きさを示している
- 裏づけがはっきりしているのは、遺伝と年齢の2つ。どちらも本人には選べない
- 喫煙・栄養状態・甲状腺・ストレスは「関連の報告あり」の層。原因と確定したわけではない
- 「不足が関わっている」と「足せば戻る」はまったく別の話
- 薄毛との関係、特定の食べ物、シャンプーの選び方、マッサージ不足は、裏づけが確認できない
- 白髪を抜いても周りの毛が白くなったり増えたりはしない。ただし抜いた毛は白いまま生え変わり、繰り返せば薄毛につながることがある
- 短期間で増えたように見えるときは、色のついた毛が抜けて白い毛が残っただけのこともある(円形脱毛症など)
- ②の層は自己判断の材料ではなく、若年・急増時に医療機関で背景を確認する手がかり
「多い人の特徴」を探しているとき、本当に知りたいのは自分がどちら側かということだと思います。ただ、その線を引く基準がない。だとすれば、比べる先を変えたほうが、手は動きます。
監修:白髪改善ソムリエ®
※本記事は一般的な情報の整理であり、特定の効果・効能を保証するものではありません。白髪の出方には個人差があります。若い年代で白髪が目立つ場合、短期間で増えた場合、頭皮や皮膚に変化がある場合は、皮膚科などの医療機関にご相談ください。
参考にした主な情報源
- British Journal of Dermatology(Panhard ら, 2012)「Greying of the human hair: a worldwide survey, revisiting the ’50’ rule」(50歳時点で白髪が50%以上ある人の割合は6〜23%。原著の表記は at least 50%。通説の「50歳で50%」は当てはまらない)
- MedlinePlus(米国国立医学図書館 NLM)「Aging changes in hair and nails」(白髪化は主に遺伝で決まること/サプリメント・ビタミン等では白髪化の進行は止まらない・減らないとの記載)
- Harvard Health Publishing「Why does hair turn gray?」(髪の色は毛がつくられる時点で決まる/白髪の時期と程度は主に遺伝の影響/円形脱毛症では色のついた毛が抜けて白い毛が残るため、急に白髪が増えたように見えることがある)
- Nature Communications(Adhikari ら, 2016)「A genome-wide association scan in admixed Latin Americans identifies loci influencing facial and scalp hair features」(白髪化と関連する遺伝子領域 IRF4 の報告)
- Int J Trichology「Premature Graying of Hair: Review with Updates」(若年性白髪の年齢の目安=白人系で20歳未満・アフリカ系米国人で30歳未満/喫煙・ビタミンB12・鉄・銅・葉酸などの栄養状態・甲状腺機能・一部の薬剤との関連を報告した観察研究の紹介。いずれも因果の確定ではない)
- NIH「How stress causes gray hair」(ストレスと色素幹細胞に関するマウス研究の紹介。Nature, 2020)
- eLife(2021)「Quantitative mapping of human hair greying and reversal in relation to life stress」(ヒトの毛でストレスの増減と色の変化が対応した例の報告。ごく一部の毛に限られるまれな現象とされる)
- American Academy of Dermatology(AAD)「What causes gray hair, and can I stop it?」(抜いた毛は通常また白髪として生えること/抜毛は薄毛(hair thinning)につながりうること)
- ホーユー「髪について(豆知識)」(白髪を抜くことが原因で白髪が増えるわけではないこと)
- NHS「Vitiligo」(皮膚の色素が抜ける疾患。患部の毛が白色・灰色になることがある)
- 日本ヘアカラー工業会(JHCIA)「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)について」(毎回48時間前からの実施の案内/体質の変化により突然かぶれるようになる場合があること/塗布部に発疹・発赤・かゆみ・水疱・刺激などの異常を感じたら48時間を待たずに洗い落とすこと/酸化染毛剤で異常が出た方は、以後、別の製品を含め酸化染毛剤を使用しないこと/対象は永久染毛剤とヘナ・ヘナ由来物を含む製品)
- 日本救急医療財団 心肺蘇生法委員会「救急蘇生法の指針2020(市民用)」(厚生労働省が周知。アナフィラキシーが疑われる症状では直ちに119番通報)
- 米国FDA「Hair Dyes」(使用のたびに皮膚テストを行うことの推奨/テストで反応がなくても、その後の使用時に反応が起こりうること)
- NHS「Hair dye reactions」(ヘアダイによる皮膚炎の症状/パラフェニレンジアミン(PPD)がかぶれの主な原因成分であること/ブラックヘナのタトゥー経験がある場合は反応のリスクが高まること/まれに起こる重いアレルギー反応=呼吸困難・唇や喉の腫れ・嚥下困難などは緊急の対応が必要)